企業研究

【SIer企業研究】SCSKの事業内容や業務、強み・弱みを分析

Contents

基本情報

会社概要

会社名 SCSK株式会社
創業年 1969(昭和44)年
事業内容
  • コンサルティング
  • システム開発
  • ITインフラ構築
  • ITマネジメント
  • BPO など
従業員数 13,979名(2020/3時点)
売上高 3,870億円(2019年度)
本社 〒135-8110 東京都江東区豊洲3-2-20
平均年収 725万円(43.4歳)

企業理念

SCSKは経営理念と、3つの約束、3つの行動指針を定めています。

経営理念

夢ある未来を、ともに作る
お客様からの信頼をもとに、共に新たな価値を想像し、
夢ある未来を築きます

3つの約束

1.人を大切にします。
一人ひとりの個性や価値観を尊重し、互いの力を最大限に活かします。

2.確かな技術に基づく、最高のサービスを提供します。
確かな技術とあふれる情熱で、お客様の喜びと感動につながるサービスを提供します。

3.世界と未来を見つめ、成長し続けます。
全てのステークホルダーの皆様と共に、世界へ、そして未来へ向けて成長し続けます。

行動指針

Challenge、Commitment、Communication

事業について

SCSKは住友商事系のユーザー系SIerとして、日本国内でTop10以内に入るSIerとなります。

住友商事の情報システム部門から独立として子会社化した、住商コンピューターサービス株式会社(SCS)を母体とし、独立系SIerであったCSKを住友商事が買収したことに伴い、SCSとCSKが経営統合し「SCSK」が設立されました。

親会社である住友商事はもちろん、その他の住友系向けにもサービス提供を行っており、住友商事グループのITパートナーとして安定した事業基盤を持っています。

事業内容

SCSKは、SIerとしてコンサルティング等の上流工程から、システム開発、ソフトやHWの再販まで、下記の幅広いサービスを組合わせクライアントに提供しています。

SCSKの主な提供サービス
  • コンサルティング
  • システム開発
  • ITインフラ構築
  • ITマネジメント
  • BPO
  • ITハード・ソフト販売

提供しているサービスとしては、上記に分類されるものですが、SCSKは事業セグメントを特定の業界をクライアントとする業種別部門と、ホリゾンタルに展開可能なソリューションを提供する機能別部門に分けています。

それぞれ、下記のように分けられています。

業種別部門
  • 製造・通信システム事業部門
  • 流通・メディアシステム事業部門
  • 金融システム事業部門
  • 商社・グローバルシステム事業部門
機能別部門
  • ビジネスソリューション事業部門
  • モビリティシステム事業部門
  • プラットフォームソリューション事業部門
  • ITマネジメント事業部門

上記の事業セグメント分けに沿って、それぞれの事業内容について詳細に見ていきます。

業種別:製造・通信システム事業部門

製造業(自動車や電機、製薬業界など)や通信業、エネルギー事業者をクライアントとしてITサービスを提供しています。

製造業においては、事業を行う上での根幹となるSCMや自社製品の生産管理テンプレート「atWill Template」を提供し、製造業の顧客の根幹を支えるシステムを提供しています。

上記のような製造業の基幹系システムとも言える「製造現場領域」のソリューションだけにとどまらず、マーケティングにおいて重要となる「顧客接点領域」、労働人口減少という課題を解決する「働き方改革領域」等の複合的な価値を提供しています。

本セグメントはSCSKの売上高のうち12.9%を占めるセグメントです。

業種別:流通・メディアシステム事業部門

流通・サービス・メディア業界をクライアントとして、業界特化のITサービスを提供しています。

このセグメントでは、更に人の生活に密接に関わる「衣」、「食」、「住」、「健」という事業の領域に分割し、それぞれに対しオムニチャネルから業務基盤までトータルで提供しています。

流通業界向けにはEDIサービス「スマクラ」や、不動産向けには顧客管理ソリューション等、それぞれの業界に対しするバーティカルソリューションを構築し、提供しています。

本セグメントはSCSKの売上高のうち16.1%を占めるセグメントです。

業種別:金融システム事業部門

銀行、生損保、証券、クレジットといった金融系の業界をクライアントとして、システム開発から運用、BPOやコールセンター運用等のサービスを提供しています。

モバイル端末・オンラインでの手続き普及や、グローバル化、Fintech等の、金曜業界の多様なニーズに応えるため、システムだけではなくBPOやコールセンターのようなアウトソーシングサービスも含め顧客のITを活用したサービス運用の効率化、安定化に貢献しています。

本セグメントはSCSKの売上高のうち16.5%を占めるセグメントです。

業種別:商社・グローバルシステム事業部門

本セグメントはSCSKの8ヶ所の海外拠点を保有し、グローバル展開する顧客をITから支えるサービスを提供しています。

グローバル企業である住友商事を始めとする商社や、その他のサービス業等グローバル化を進める顧客向けにシステム構築から保守/運用、グループ経営を支えるグループ管理システムを構築し提供しています。

特に親会社である住友商事向けには長年に渡りシステムの構築から保守までフルアウトソーシングで受託しており、事例やノウハウを蓄積しています。

本セグメントはSCSKの売上高のうち4.7%を占めるセグメントです。

機能別:ビジネスソリューション事業部門

クライアントのITの低予算化・標準化を進めるため、ERPやCRMのデファクトスタンダードとなるようなSaaS製品の提供を行っています。

ERP領域では、自社サービスである「ProActive」シリーズや、グローバルでのデファクトである「SAP」を提供している他、
CRMではCRM業界でシェアNo1の「Salesforce」もこのセグメントで提供しています。

上記のような業務基盤領域でのITサービスだけではなく、RPAやAI、データマネジメント等のDX領域の製品も再販しています。

本セグメントはSCSKの売上高のうち13.6%を占めるセグメントです。

機能別:モビリティシステム事業部門

自動車業界向けに車載システムの提供を行っています。

主に車の制御を行う組み込みのソフトウェア開発を行っています。

変速機等のパワートレイン制御や、スライドドア等のボディ制御、ステアリング等の車両制御など、多くの車載システムで開発実績があります。

本セグメントはSCSKの売上高のうち5.8%を占めるセグメントです。

機能別:プラットフォームソリューション事業部門

ネットワーク、セキュリティ、サーバー・ストレージ、ミドルウェア、CAD・VR、解析ソリューションの6つの製品群の、販売、構築、サポートを提供しています。

住友商事グループの商社としての系譜を引き継ぎ、海外製品の日本市場の展開を行っています。

様々な国内外のパートナープロダクトを単なる卸売りではなく、CarePlus等のサポートサービスを付加しユーザーに提供していくビジネスモデルとなります。

このようなIT商社としてのビジネスは、再販モデルであり、低リスクで利益を確保しやすいという特徴もあります。

本セグメントはSCSKの売上高のうち16.5%を占めるセグメントであり、金融システムセグメントと並び、最大の事業規模のセグメントです。

機能別:ITマネジメント事業部門

IT基盤を構築する「基盤インテグレーション」、IT運用を常駐型で請け負う「オンプレミス事業」、「データセンター事業」を展開しています。

「クラウドファースト」にシフトするユーザーのニーズに応えるため、「USiZE」という自社のデータセンターブランドの展開に注力しており、他社データセンタとの接続や、サポート・運用サービスを差別化要素としたビジネス展開を行っています。

本セグメントはSCSKの売上高のうち12.5%を占めるセグメントです。

業績

次に、SCSKの業績を見ていきましょう。

以下のグラフは過去5年間のSCSKの売上高と営業利益率です。
(このグラフはSCSKが公表しているIR情報を元に当方でグラフを作成しています。)

2019年度の売上高は3,586億円となっています。

SCSとSCKの合併以来、7期連続で増収増益と堅調に事業を拡大しています。

競合が激しいIT業界においても、市場のIT投資の拡大のチャンスをきちんと捉え、ものにしているという点においても評価できる成長だと考えます。

営業利益率に関しても、10%前後を確保できており、大手SIerの富士通4%前後、NTTデータ7%前後という数値から見てもわかるように、高利益体質のビジネスを実現できていると言えます。

高収益体質をキープできている要因としては、以下の3点が考えられます。

  • 顧客特性上、高利益を生みやすい金融システムの規模が売上高の中でも一定の規模を保っている
  • リスク・投資が少ない仕入れ販売(再販)モデルの、プラットフォームソリューションの規模が大きい
  • 全売上高の25%以上を占める住友グループからの安定収入

また、金融では「BankSaver」、基幹系では「ProActive」等のサービス型のビジネスへのシフトも競合と比較してもいち早く推進しています。

この、サービス型ビジネスモデルでの、収益の安定性、成長が今後の企業全体の成長のカギを握ると思われます。

まとめ
  • 合併以来7期連続で増収増益、利益率も10%前後を確保で堅調な成長
  • 住友グループからの安定収入や高利益の顧客を確保
  • サービス型ビジネスへのシフトと成長の実現が継続成長のカギ

SCSKの強み

住友グループという超優良な顧客基盤

ユーザー系SIerの最大のメリットだと言えますが、親会社の住友商事をはじめ、住友グループからの安定した収入が期待できます。

住友グループからの売上高は25%を超えており、ビジネスの安定性に大きく寄与しています。

外販も展開するユーザー系SIerとして、住友グループ中で技術アセットや先進的な事例を蓄積し、そのオファリングを広く展開できる基盤を持っているというのは、大手の住友グループ系のSIerの最大の優位性と言えるでしょう。

サービス型ビジネスモデルでの先見性

顧客の要望に合わせて、フルスクラッチでシステムを構築していく一般的なSI型のビジネスモデルからの方針転換にいち早く取り組んでいます。

システムをサービスとして提供することで、システムの導入におけるアジリティの向上を実現し、SCSKとしては安定的に毎年のシステム利用料(基本料や従量課金)で収益を上げるビジネスモデルです。

SIのような労働集約型の人月商売よりも高い利益を上げやすく、また、差別化や優位性を発揮しやすいのもこのビジネスモデルの特徴です。

SCSKでは、2017年頃より「サービス提供型ビジネス」として、以下のようなサービス型のシステムを提供しており、着実に実績を積み上げています。

SCSKのサービス提供型ビジネス例

金融

  • BankSavior:アンチマネーロンダリングソリューション
  • MINEFOCUS:インターネットバンキングアプリ
  • FR2Go:渉外業務用コンテンツ基盤

製造

  • PrimeDashBoard:製造業向けIoTソリューション

共通系

  • ProActive:ERPパッケージ
  • PrimeTiaas:コンタクトセンター基盤

2023年3月までの中期経営計画では、上記のようなサービス提供型のビジネスの売上高を20%を占める800億円まで伸ばすことを掲げており、ますます注力していくと思われます。

ワーク・ライフ・バランスの充実

事業の強みとは直接的には関係ありませんが、SCSKはワーク・ライフ・バランスの実現に非常に力を入れいている企業としても知られています。

一般的にSCSKのような中堅のSIerでは大手のようなリソースや余力も無く、ワーク・ライフ・バランスに力を入れることは難しく、過重労働が常態化しているケースが多いです。

SCSKでは、「スマートワークチャレンジ」という取り組みを進め、ワーク・ライフ・バランスの実現にいち早く取り組んできました。

取り組み開始当初には、35時間を超えていた平均残業時間は、2018年には、約半分の17.6時間にまで削減に成功しています。

さらに、有給の取得率も2012年度78.4%から2018年度には94.4%と大幅に向上しており、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた労働環境の改善は成功していると言えます。

こういった取り組みは、優秀な人材の確保や人材の定着率の向上という側面で効果をもたらし、人材戦略上の良いサイクルを生み出す基盤が出来上がっています。

SCSKの弱み

AI、IoT等の先端技術を活用したDXビジネスへの取り組み

SIベンダーへのクライアントの期待は、「基幹システムのお守役」から「IT活用による事業競争力強化のパートナー」へと移ってきています。

そのような中で、先進的な技術を活用したソリューション提供の期待も大きいですが、SCSKではこのDX領域で目立った事業開発が進んでいるかと言われると、そのような事例やノウハウはまだ出ていません

広く浸透したソリューションを後から採用する程度には着実に取り組んでいる印象はありますが、進んでマーケットを開拓したり、圧倒的な優位性を取りに行くような競争力はありません。

技術トレンドに追いつくため新部署を作ったりしていますが、PoCレベルでも突出した実績を聞くことはほとんどなく、DX時代をリードするIT企業になるには、この領域での強みを磨いていく必要があります。

御用聞きのSIerと、コモディティ化した技術のサービス化で勝ち残ることは難しいと思われます。

2023年3月までの中期経営計画でも、「DX事業化」という戦略が掲げていますが、この領域をどれだけ成長させられるかが成長のカギと思われます。

グローバル化の遅れ

メーカー系、独立系の他社大手SIerと比べると、体力もなく、ユーザー系として住友グループ系で良くも悪くも安定志向でビジネスが展開ができているため、グローバルビジネスは進んでいません

もともと商社系ということもあり取り組みやすい分野であるはずですが、拠点はわずか6拠点(米国、英国、中国、シンガポール、ミャンマー、インドネシア)しかありません

今後は、市場成長が見込まれる東南アジアを中心にグローバルを推進していく計画のようです。

海外の先進技術のキャッチアップや、日系のクライアントのグローバル化のサポートといった面でも、グローバルネットワークは非常に重要です。

住友商事のネットワークも活かし、海外にビジネスの舞台を広げる戦略と実行が求められています。

SCSKの業務内容

技術系職種

SCSKの技術系職種には、「システムエンジニア」、「システムコンサルタント」、「ネットワークエンジニア」、「研究開発職」などがあります。

主な職務の内容としては、以下のような内容となっています。

・アプリケーション、ネットワーク、パッケージソフトなどに関する提案、設計、開発、運用、保守およびそのプロジェクト管理
・情報技術に関する調査、研究、製品開発および情報技術戦略の立案・推進

営業系職種

営業系の職種では、顧客の開拓や提案からクロージングまでを担当します。

主な職務としては、以下のような内容となっています。

・ハードウェアおよびソフトウェアの輸入・販売など
・システム・インテグレーション、パッケージ・インテグレーション、エンジニアリング・ソリューション、ネットワーク・ソリューションなどに関する案件の提案営業および新規顧客の開拓

競合企業

SCSKを受けるなら読んでおきたい本

SCSKのシゴト革命

働き方改革先進企業としてしられるSCSK流の仕事術が解説された本

SCSKのシゴト革命 業務クオリティ向上への取り組み

SCSKのシゴト革命 業務クオリティ向上への取り組み

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