企業研究

【SIer企業研究】日立製作所の事業内容や業務、強み・弱みを分析

基本情報

会社概要

会社名 株式会社 日立製作所(Hitachi, Ltd.)
創業年 明治43年(1910年)
事業内容
  • 情報・通信システム
  • 社会・産業システム
  • 電気装置・システム
  • 建設機械
  • 高性能材料
  • オートモーティブシステム
  • 生活・エコシステム
  • その他
従業員数 29万5,941人(2019/3時点)
売上高 99,300億円(うちITセクター:20,994億円)
本社 東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
平均年収 894万円(平均年齢42.1歳)※2018年度有価証券報告書より

日立グループ・アイデンティティ

Mission:企業理念

優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する

Values:日立創業の精神

ミッションを実現するために大切にするべき価値観として、以下の3つを定めています。

他人の意見を尊重しつつ、偏らないオープンな議論をし、一旦決断に至れば共通の目的に向かって全員一致団結すること。

他社に責任を転嫁せず、常に当事者意識を持って誠実に事にあたること。社会から信頼をかち得るための基本姿勢。

開拓者精神

未知の領域に、独創的に取り組もうとすること。常に専門分野で先駆者でありたいと願い、能力を超えるような高いレベルの目標に挑戦する意欲のこと。

Vision:日立グループ・ビジョン

日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界を目指します。

事業について

日立製作所は、日本最大級の総合電機メーカーであり、鉄道や電力などの社会インフラを手掛けるメーカー、そしてITサービスベンダーでもります。

本記事では、SIerとしての日立製作所、つまりITサービス関連の事業に注目して企業研究していきます。

ITセクターの事業内容

日本国内ITサービスベンダーとしては、富士通、NTTデータに次ぐ規模を誇っているのが日立製作所です。

日立製作所におけるITサービス事業は『ITセクター』という事業セグメントに位置付けられており、ITセクターでは大きく下記の2つのビジネスを行っています。

  • サービス&プラットフォーム
  • フロントビジネス

ITセクターは2020年の売上高予測で27%の構成比を期待(2021中期経営計画進捗より)されています。

これはライフセクターと並び、7兆円を超える日立製作所全体のビジネスにおいても最大のセグメントとなっています。

コングロマリット的な多角的な事業を展開する日立製作所において、明確にIT事業を主軸に据えた経営の成長戦略を描いており、このITセクターに更に資金やリソースを投入していくと予想されます。

それでは次に、ITセクターにおけるそれぞれのビジネスの内容について見ていきたいと思います。

サービス&プラットフォーム

サービス&プラットフォームでは、技術やプロダクトを主軸としたサービスを展開しています。

サービス&プラットフォームビジネスで展開している主なサービスは以下のようなものです。

  • IoTプラットフォーム
  • データアナリティクス
  • 人工知能
  • クラウドサービス
  • セキュリティ
  • ストレージ・サーバー等のHW製品
  • 制御システム

2019年度の売上高ベースで、ITセクターの売上高の約37%となる7,805億円を上げているのがこのサービス&プラットフォームビジネスです。

クラウドやIoTプラットフォームといった、サービスを展開しており、日立製作所が成長のコアとして位置付けている『Lumada』事業の中核を担うビジネス領域となっています。

フロントビジネス

フロントビジネスでは、金融や、公共、社会インフラを担う企業等に向けたITシステムを提供しています。

様々な業界で企業や公共団体等に個別のシステムを提供する、いわゆるSI事業を展開しているのがこのフロントビジネスの領域です。

フロントビジネス領域では、以下のようなサービスを提供しています。

  • 金融システム:銀行・保険・証券向けIT
  • 公共システム:官公庁・自治体・文京向けIT
  • 社会インフラ向けシステム:電力/エネルギー・交通・通信キャリア向けIT
  • ディフェンスシステム
  • 共通IT機能:アプリケーション開発、エンジニアリング、運用保守、プロジェクトマネジメント、品質保証

本フロントビジネス領域は、2019年度売上高ベースで63%の14,215億円を売り上げています。

日立製作所本体としては、大規模・ミッションクリティカルなSIを中心に多くの実績があり、日立製作所のITセクターの収益基盤となっています。

業績

次に日立製作所のITセクターの業績を見ていきましょう。

以下のグラフは、日立製作所の過去5年間のITセクターの業績です。
セグメント区分が変更になっているため、2018年度分までは現ITセクターの前身となった情報通信システムセグメントの業績と比較しています。
(このグラフはNECが公表しているIR情報を元に当方でグラフを作成しています)

2020年度の日立製作所のITセクターの売上高は2兆0994億円となっています。

安定的に2兆円前後のトップラインを確保しており安定した事業基盤を持っていることが伺えます。

また、営業利益率においても順調に右肩上がりの成長を遂げており2019年度には11.9%に達し、高収益体質への転換も順調に進んでいると思われます。

日立製作所が競合として標榜しているのがアクセンチュアやIBMですが、これらの外資系メガSIerと比較しても遜色ない利益率を実現できています。

事業規模においては両社と比較すると見劣りし、国内でも富士通というメーカ系で類似のビジネスモデルで上がいる状況を見ると、事業領域の幅出しや競合の領域を奪取する等のトップライン拡大する取り組みも必要と言えるでしょう。

また、日立製作所全体では50%前後の海外売上高比率となっていますが、ITセクターにおいては2018年度実績で29%と、全社の足を引っ張っている状況です。

国内で確立した強みを海外へも展開し、事業領域拡大を目指していく必要があるでしょう。

今後日立は、2021年度が最終年となる中期経営計画の中で8,300億円を投じ、グローバル展開の加速を計画しています。

これが奏功し、日本国内の事業に依存しないポートフォリオを形成できるかが、さらなる事業成長のカギとなると思われます。

まとめ
  • 2兆円前後という大規模で安定した事業基盤
  • 営業利益率も国内SIerでもトップクラスとなる10%超えの高利益体質
  • グローバル展開への積極投資と、強み領域を確立、海外事業成功が成長のカギ

日立製作所の強み

幅広い事業領域を活かしたクロスセル、クロスイノベーション基盤

社会インフラを中心に、事業領域の広さが他のSIerと比較しても日立製作所の特徴のひとつとなっています。

まさにオール日立で様々な業界・業種に対して、複合的なソリューションを提供できます。

『Lumada』という日立の事業領域で横断的に活用できるデジタルプラットフォームを構築し、「エネルギー」、「インダストリー」、「モビリティ」、「ライフ」といった他の事業セグメントのDXの実現を推進しています。

通常のSIerであれば、クライアント企業や他のパートナーとの共創によって実現する業界・社会のDXを、日立は自社の事業の中に組み込んで社会に提供できるイノベーション基盤をもっていることは大きな強みとなると思われます。

ITセクター、デジタル領域を日立製作所の成長エンジンと位置付けていることからも、この他事業領域とのシナジーや複合的な価値創出を差別化要素とし、社会イノベーションを推進していくと思われます。

日本国内での日立グループの信頼と顧客基盤

金融や公共、エネルギーや通信など、社会インフラ系のプロジェクトも広く手掛けており、その領域での実績・信頼も獲得できています。

社会インフラともいえる大規模・高難易度なプロジェクトのプロジェクトマネジメント力も含め、実績とノウハウが溜まっている点はSIerとしての強みと言えるでしょう。

また、大規模な領域で、大口の顧客を抱えているため、社会への貢献度も高く事業も安定しやすい良質な顧客基盤を持っていると言えます。

規模の大きな良質な顧客に対し、メーカー系SIerとしての特徴でもあるHW製品での知名度も一定のレベルで確保しており、ハードからソフトまで一気通貫で提供することが可能となっています。

こういった実績と優良な顧客基盤とといった部分は一朝一夕で構築できるものではなく、このような『ブランド力』ともいえる日立製作所への信頼を軸とした継続的なビジネス拡大は今後も期待できると考えてよいでしょう。

日立製作所の弱み

圧倒的な規模が故のスピード感の遅さ

技術やソリューションの面で、業界を牽引している存在とは言い難く、特にデジタル関連のビジネス領域では二番煎じのような製品やサービスを後発で出すことが多いです。

単一企業体としては、競合のSIerと比較しても突出して規模が大きく、それが「リスク」、「社内プロセス(意思決定スピード)」、「イノベーション人材不足」等の要因により、ITサービスという流れの早い事業領域においては、スピード感に欠けるビジネス状況となってしまっています。

「顧客からデジタルビジネスの引き合い相談をもらうよりも、社内でそれを通すほうが難しい」という声も聞かれ、スピード感不足は今後致命的な競争力低下招きかねません。

会社が大きく、事業領域が幅広いという強みの裏返しではあるものの、競合に先んじてイノベーションを創出し、イノベーション領域での先行者利益を確保することで業界を牽引する存在となれるかが課題だと思います。

『Lumada』を打ち出し、日立グループ内でのシナジーの創出により、こういったイメージを払拭しようと取り組みを進めていますが、これを主戦略とした成長を期待したいところです。

競合企業、参考企業

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