企業研究

【SIer企業研究】富士通と日立製作所の強み・事業・将来性などを比較

今回は就職活動・転職市場においても、日系の大手メーカー系SIerとして未だに人気の高い富士通と日立製作所の比較をご紹介します。

今回の企業分析においては、主にITサービスベンダーとしての富士通と日立製作所の比較となります。

特に日立においては、コングロマリットとして多岐にわたる事業領域を保有しているため、ITセクターに閉じて富士通との比較を行っていきます。

基本的な情報ソースとしては、両社が公開しているIR情報やアニュアルレポート、同業界に身を置く筆者の経験から、比較情報をまとめています。

それぞれの企業の個別の分析の記事はこちらにあります。

富士通と日立製作所の企業概要比較

まずは、両社の売上高や従業員数等、企業のアウトラインがわかる情報から比較していきます。

富士通 日立製作所
設立 1935年 1910年
従業員数 連結 132,000名(2019/3) 連結 295,941人名(2019/3)
売上高 3兆8,577(2019年度) 2兆0,994億円(2019年度)※ITセクターのみ
営業利益率 5.5%(2019) 11.9%(2019)
海外売上高比率 31.8%(2019年度) 29%(2018年度)

事業規模比較 解説

事業規模については、富士通が日立製作所のITセクターの約1.8倍の事業規模となっています。

日本のITサービスベンダーランキングで、富士通は1位、日立製作所は4位となっており、両社とも日本を代表する事業規模を誇っていることがわかります。

売上高としては、ベンダランキング1位の富士通が日立製作所を突き放しており、ITサービスベンダとしてのプレゼンスという意味では、富士通に軍配が上がります。

営業利益率 解説

営業利益率に関しては、富士通の5.5%と比べ、日立製作所は11.9%となっており、日立製作所の方が約2倍、高利益体質と言えます。

日立製作所はIT以外も含めた事業領域横断でデジタル化を推進する『Lumadaプラットフォーム』を主軸に据えた、全社横断型でのデジタルシフトに取り組んでおり、ビジネスモデルの変革と高利益体質への展開が富士通よりも進んでいると言えるでしょう。

営業利益率としてはグローバルでメーカー系として最大の競合となるIBM(10%超え)や、国内の最大手ITベンダのNTTデータ(約7%)と比較すると、富士通はもうひと頑張り、日立製作所は優秀なビジネスモデルを構築できています。

海外売上高比率 解説

海外売上高比率に関しては、富士通が31.8%(2019)、日立製作所が29%(2018)となっています。

比較年度が違うものの、グローバルビジネスの規模に大きく影響を及ぼすM&A等も無いため、ITサービスにおける海外売上高は両社とも3割程度と考えてよいでしょう。、

両社とも、海外においてHW販売を除くSIやサービス提供ではプレゼンスが低く、ITサービス領域では苦戦している状況です。

日本の『ものづくりメーカー』としての知名度は両社とも、老舗の電機・HWメーカーとして知られているはずですが、ITサービスの領域におけるグローバル化という意味では、順調とは言い難い状況です。

強み・弱み比較

強み

富士通 日立製作所
ITサービスベンダとしてのプレゼンス
国内No1のITサービスベンダとしての地位・ブランド力があり、優良な顧客基盤を抱えている。

サーバー製品の安定した売上
サーバー製品の国内市場シェアにおいても、25%程度を確保(IDC調べ)しており、今後も安定的な収益が期待できる。

幅広い事業領域を活かしたクロスセル基盤
オール日立で様々な業界・業種に対して、複合的なソリューションの提供が可能。
『Lumada』という日立の事業領域で横断的に活用できるデジタルプラットフォームによる事業横断でDXを推進。

日立グループの信頼と顧客基盤
社会インフラ系のプロジェクトも広く手掛けており、その領域での実績・信頼も獲得している。
大規模・高難易度なプロジェクトでの実績とノウハウ、ブランド力を活かした事業展開が期待できる。

富士通について

国内市場においては、シェア1位を獲得していだけあり、顧客基盤が安定しているため、事業の安定性も期待できます。

ITサービス、HW両方のこれまでの実績から、富士通を事業のパートナーとして認めている企業も多いため、顧客基盤を活かした新たなビジネスの拡大も期待できます。

日立製作所について

ITセクターの事業規模としては、2兆円前後で横ばい傾向となっています。

今後は『Lumada』を中心とした事業領域横断でのデジタル化の推進により、社会インフラ等の他事業とのシナジーの創出や社会イノベーションの創出を目指していく方針で、他の事業領域とのクロスイノベーションが期待できる点はコングロマリットならではの強みであると言えます。

弱み

富士通 日立製作所
デジタル領域での新ビジネス創出
これまでのHW販売やSI型のビジネスだけではなく、新たなデジタルビジネスへの転換という意味では、出遅れ感が否めない。

グローバルでの競争力
一度は海外売上高比率50%を中期経営計画に盛り込んだが、これを目処がないことから撤回するなど、具体的な進捗が見られない。

圧倒的な規模が故のスピード感の遅さ
技術やデジタルソリューションの面で、他の大手SIerと比較しても、二番煎じのような製品やサービスを後発で出すケースが目立つ。
イノベーション文化の醸成やデジタル人材の確保等、競合に先んじてイノベーションを創出するための仕組み作りが課題。

富士通

デジタルビジネスの領域で出遅れていると言わざるを得ません。
規模の大きな本社主導での実現を諦めたのか、新会社を設立()したが、これをドライバーに加速させることができるかが注目されます。

グローバルについては、具体的な目標と戦略を再設定し、飽和状態の日本市場以外での成長を見込める状態を作ることが課題となっています。

日立製作所

さらにはデジタルサービスの領域での覇権争いという意味でも、富士通同様、イノベーション体質への転換が課題です。

デジタルサービス活用の領域においては、顧客基盤を持たない外資系ベンダやベンチャー企業も参入障壁が低いため、愚直にデジタル構想力(コンサル力)や、技術の先進性、スピード感が事業上の課題になりかねません。

日本国内でのシェアの維持はもちろん、海外での事業展開による事業規模の拡大を目指すのであれば、競争力強化の源泉として、ITサービスという流れの早い領域でスピード感を持って先進的なサービスを生み出す仕組みの確立が不可欠です。

事業内容比較

事業内容としては、両社は似ている点が多くあります。

両社ともサーバー等のHWからICTソリューションまでを一気通貫で提供できるケイパビリティを備えています。

また、両社ともHWベンダー(もっというと総合電機メーカー)から、ITサービスベンダーへとビジネスモデルのシフトを志向しているという点においても同じ方向性を目指す競合といえます。

古くから電電ファミリーの中核会社として、ミッションクリティカルな領域で存在感を発揮し、実績を積み上げてきているという点でも類似しています。

事業内容としては、ほとんど類似しているので、強みや弱み、志向するインダストリーでの特定の顧客へのサービス提供実績等、細かい部分でどちらの会社が自分に合うかを選択する必要があります。

将来性比較

ここからは強みや弱み、ビジネスモデルを踏まえた予想になります。

富士通

これまで築いてきた国内で最王手のIT企業という地位から、潰れることはまずないでしょう。

ただし、デジタルサービス、アプリケーションレイヤーでのイノベーションという意味ではプレゼンスが弱く、
この領域では、NTTデータ等の国内SIer、アクセンチュアやIBM等の外資系ITサービスベンダーに引き離されていく可能性があります。

また、マーケット自体がグローバル化しているため、国内ではある程度のポジションを引き続き堅持していくものを思われますが、
グローバルでのベンダランキングは徐々に交代していくものと予想されます。

グローバルマーケットで戦える企業になれるか、という意味では、現時点での中期経営計画等の事業方針や、海外ビジネスの現状を見ると厳しいと言わざるを得ません。

日立製作所

日立製作所全社においては、ITセクターが占める売上高は約3割となっており、事業ポートフォリオの安定性という意味では、他の大手SIerと比較しても圧倒的と言えます。

こちらも、防衛領域といった国家レベルのプロジェクトでのニーズがまだ十分にあることを考えると、ITサービスベンダとしての安定性も高いと思われます。

多角的な事業を展開する日立製作所ならではの高付加価値として、事業横断のクロスイノベーションで新たな事業を創出できるかが今後の成長におけるキーファクターとなるでしょう。

また、富士通と同様に、国内でのプレゼンスが急落することはないと思われますが、海外事業は抜本的な方向転換がないと、世界のITサービスベンダーとしては後退していくでしょう。

平均年収比較

両社の有価証券報告書によると、平均年収は以下のようになっています。

  • 富士通:798万円(平均年齢43.2歳)
  • 日立製作所:894万円(平均年齢42.1歳)

平均年齢もほとんど同じ状況での比較で、日立製作所の方が高給のようです。

いずれも、日系のメーカー系SIerとしては大手なので、日系企業としては年収が高いほうだと言えます。

ですので、収入でどちらが良いというよりは、自身のスキルや志向とマッチする方を選ぶべきと考えます。

年収とは関係ないですが、両社とも平均年齢が42歳以上と、非常に高齢なのは気になります。

IT企業は、最新技術へのキャッチアップが必要なことや、個人で上昇志向があり、かつ、市場価値の高い人材の流動性が高い業界なので、「年功序列の文化が根強く残っているのでは」、とも推察できます。

参考情報

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