今回は就職活動・転職市場においても、日系の大手SIerとしてのTOP2に君臨する富士通とNTTデータの比較をご紹介します。
今回の企業分析においては、主にITサービスベンダーとしての富士通とNTTデータの比較となります。
IT業界の転職・就職市場の中でも人気の両者ですが、今回はそんな両者に事業や強み・弱みを比較していきます。
基本的な情報ソースとしては、両社が公開しているIR情報やアニュアルレポート、同業界に身を置く筆者の経験から、比較情報をまとめています。
それぞれの企業の個別の分析の記事はこちらにあります。
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Contents
富士通とNTTデータの企業概要比較
まずは、両社の売上高や従業員数等、企業のアウトラインがわかる情報から比較していきます。
富士通 | NTTデータ | |
設立 | 1935年 | 1910年 |
従業員数 | 連結 129,071名(2020/3) | 連結 133,196名(2020/3) |
売上高 | 3兆8,577億円(2019年度) | 2兆2,688億円(2019年度) |
営業利益率 | 5.5%(2019) | 5.8%(2019) |
海外売上高比率 | 31.8%(2019年度) | 40.0%(2019年度) |
事業規模比較 解説
事業規模については、富士通がNTTデータの約1.7倍の事業規模となっています。
日本のITサービスベンダーランキングで、富士通は1位、NTTデータは2位となっており、両社とも日本を代表する事業規模を誇っていることがわかります。
売上高としては、ベンダランキング1位の富士通がNTTデータを1.5兆円以上も突き放しており、日本国内でのITサービスベンダとしての事業規模の大きさという意味では、富士通に軍配が上がります。
ただし、NTTデータはHW事業を持っておらず、純粋なITコンサルティングからアプリケーション構築の領域のプレゼンスという意味では、NTTデータを評価する事ができます。
特に官公庁や金融向けでは、電電ファミリーである富士通がNTTデータにHWを納入しNTTデータがプライムでミッションクリティカルなシステムを構築していたりするため、プライムベンダーとしての位置づけは純粋な事業規模のみで比較できない点は注意が必要です。
営業利益率 解説
営業利益率に関しては、富士通の5.5%、NTTデータは5.8%となっており、NTTデータの方がわずかに高利益体質と言えます。
富士通に関しては、営業利益率がここ数年は安定していませんでしたが、不採算事業の処理も概ね完了し、2018年度から大きく回復しています。
NTTデータは、日系のSIerの中では最も海外展開が進んでおり、海外売上高の成長や大型デジタル案件でのプレゼンスは着実に向上していますが、利益率という意味では海外事業の成長が課題となっています。
営業利益率としてはグローバルでメーカー系として最大の競合となるIBMやアクセンチュア(10%超え)や、と比較すると、両社とももうひと頑張りといったところです。
海外売上高比率 解説
海外売上高比率に関しては、富士通が31.8%(2019)、NTTデータが40%(2019)となっています。
富士通は、海外においてHW販売は『日本のものづくりメーカー』として一定の信頼がありますが、SIやサービス提供ではプレゼンスが低く、ITサービス領域では苦戦している状況です。
一方NTTデータは、北米やEMIA領域において、大型のM&Aにより着実にプレゼンスを確保しています。
地理的なカバレッジは50カ国・220都市を超えて確保しており、2016年にはDellのITサービス部門(Dell Services)を買収するなど、派手に海外展開を推し進めています。
強み・弱み比較
強み
富士通 | NTTデータ |
ITサービスベンダとしてのプレゼンス 国内No1のITサービスベンダとしての地位・ブランド力があり、優良な顧客基盤を抱えている。 サーバー製品の安定した売上 |
国内最大手の専業SIerの実績と信頼 専業のITサービスベンダーとしては最大の規模を誇っており、公共や金融を中心に圧倒的な存在感。 影で国を支えてきた信頼と大規模・良質な顧客基盤。 急ピッチで進むグローバル展開 |
富士通について
国内市場においては、シェア1位を獲得していだけあり、顧客基盤が安定しているため、事業の安定性も期待できます。
ITサービス、HW両方のこれまでの実績から、富士通を事業のパートナーとして認めている企業も多いため、顧客基盤を活かした新たなビジネスの拡大も期待できます。
NTTデータについて
HWを持たない専業のHWベンダーとしては圧倒的な規模を誇っており、同程度以上の規模を持つのはHW事業を有するF/N/H(富士通・NEC・日立)のみという実質業界最大手です。
その大規模システムへの信頼性と顧客基盤はもちろんですが、日系のSIerでITサービス領域で海外進出をここまでの規模で推進しているのは他になく、日系IT企業で海外事業を推進したければNTTデータが筆頭候補になると思われます。
弱み
富士通 | NTTデータ |
デジタル領域での新ビジネス創出 これまでのHW販売やSI型のビジネスだけではなく、新たなデジタルビジネスへの転換という意味では、出遅れ感が否めない。 グローバルでの競争力 |
海外事業での「稼ぐ力」の強化 「利益」に着目するとNTTデータ全体の事業の中では貢献が低い。 売上高を一定規模に成長させた今、利益構造の改善が今後の課題。 コンサルティング領域でのプレゼンス |
富士通
デジタルビジネスの領域で出遅れていると言わざるを得ません。
規模の大きな本社主導での実現を諦めたのか、新会社を設立(*)したが、これをドライバーに加速させることができるかが注目されます。
グローバルについては、具体的な目標と戦略を再設定し、飽和状態の日本市場以外での成長を見込める状態を作ることが課題となっています。
NTTデータ
海外事業のトップラインの拡大はかなり順調に進んでいるようですが、海外事業は収益性という意味で利益の確保はまだ課題があります。
また、経営戦略においてIT・デジタル戦略が重要な要素になっている現代において、アクセンチュア等のコンサルティング領域から入り込むITベンダーとどの様に戦う事ができるかが、ITサービスの専業でグローバルTOP5という大きな目標を達成する上でのカギとなるでしょう、
事業内容比較
事業内容としては、大きくは両社とも大規模システムの提供に強みを持ち、官公庁や金融、大手企業を中心にSIを行っているという点では似通っています。
HWレイヤーから提供できる富士通と、マルチベンダーとして最適なHWを組み合わせて提供するNTTデータという違いがあります。
富士通は、HWベンダー(もっというと総合電機メーカー)から、ITサービスベンダーへとビジネスモデルのシフトに注力しています。
一方NTTデータは、グローバル化とデジタルビジネスの創出に非常に力を入れているように見えます。
一言に『日系大手のSIer』と言っても、上記の通り強みや弱み、志向する成長領域が異なるため、どちらのモデルが自分に合うか、各インダストリーでの特定の顧客へのサービス提供実績等の具体的な情報の中で、どちらの会社が自分に合うかを選択する必要があります。
将来性比較
ここからは強みや弱み、ビジネスモデルを踏まえた予想になります。
富士通
これまで築いてきた国内で最王手のIT企業という地位から、潰れることはまずないでしょう。
ただし、デジタルサービス、アプリケーションレイヤーでのイノベーションという意味ではプレゼンスが弱く、
この領域では、NTTデータ等の国内SIer、アクセンチュアやIBM等の外資系ITサービスベンダーに引き離されていく可能性があります。
また、マーケット自体がグローバル化しているため、国内ではある程度のポジションを引き続き堅持していくものを思われますが、
グローバルでのベンダランキングは徐々に交代していくものと予想されます。
グローバルマーケットで戦える企業になれるか、という意味では、現時点での中期経営計画等の事業方針や、海外ビジネスの現状を見ると厳しいと言わざるを得ません。
NTTデータ
創業から30年以上も増収を続けており、海外事業も順調に拡大している点からしても、まだ成長が期待できると思われます。
海外の各地域でのカバレッジを確保した今後の課題としては、アクセンチュアやIBM等の海外のメガSIerとどの様にの戦っていくか、これらの企業に負けない明確な強みを打ち出して行く必要があります。
DXや上流のコンサルティング、デザインと言った文脈の中で、ケイパビリティを拡張し、グローバルで戦う事ができる強みを身につけられるかが今後大きく躍進し、本当の意味でグローバルベンダーになれるかの課題となるでしょう。
平均年収比較
両社の有価証券報告書によると、平均年収は以下のようになっています。
- 富士通:798万円(平均年齢43.2歳)
- NTTデータ:828万円(平均年齢38.7歳)
平均年齢もNTTデータの方が若く、平均年収もNTTデータの方が高くなっています。
いずれも、日系のメーカー系SIerとしては大手なので、日系企業としては年収が高いほうだと言えます。
ですので、収入でどちらが良いというよりは、自身のスキルや志向とマッチする方を選ぶべきと考えます。
参考情報
IT企業/SIerへの転職でおすすめの転職エージェント
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